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測度論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
測度から転送)
BERJAYA
AB部分集合なら、A の測度は B と等しいかそれより小さい。また空集合の測度は 0 でなければならない。

測度論(そくどろん、: measure theory)は、数学実解析における一分野で、測度とそれに関連する概念(完全加法族可測関数積分等)を研究する。ここで測度(そくど、: measure)とは面積体積個数といった「大きさ」に関する概念を精緻化・一般化したものである。積分の概念は図形の面積体積と密接に関係しているため、積分(厳密にはルベーグ積分)は測度論を基盤にして定式化および研究される。

また、測度の概念は確率を数学的に定式化する際にも用いられるため(コルモゴロフの公理)、確率論統計学においても測度論は重要である。たとえば「サイコロの目が偶数になる確率」は目が 1, ..., 6 になるという 6 つの事象の集合の中で、2, 4, 6 という 3 つ分の「大きさ」を持っているため、測度の概念で記述できる。

概説

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与えられた集合上の測度は 2 段階のステップで定義される。まずその集合の部分集合で測度が定義可能なもの(可測集合という)はどれであるかを決め、次にそれらの部分集合に対し具体的に測度を定義する。測度の定義は形式的に与えられ、その要件は、空集合の測度が 0 であることと、n 個の互いに素な集合の測度の和がそれらの集合の和集合の測度と一致することだけである。前述した面積、体積、個数はいずれも測度であることが容易に確かめられる。

重要なことは上の定義で n可算個であってもよいということである。このことが測度論をベースにした積分の定義(ルベーグ積分)を従来の定義(リーマン積分)よりも使い易くしており、前者では適切な条件のもと積分と可算和の順番を交換できることを保証できる(有界収束定理)が、後者の場合は同じ条件下であってもこの種の交換は有限和のときにしか保証されない。

この測度の概念において、測度が定義できない集合(ルベーグ非可測集合)が存在することが知られている。例えば 上の測度として長さを考えた場合、長さが定義できないヴィタリ集合が存在する。しかしながら、このような測度を定義できない集合は通常の方法では構成できず、その構成には選択公理が必要であることが知られているため、不可測集合の存在は通常の解析学を展開する上であまり障害にならない。なお、選択公理を用いて構成される不可測集合を利用すると、3次元以上の空間において、球体を有限個の断片に分割し、それらを回転・平行移動して組み合わせることで、元の球体と同じ体積の球体を2つ作ることができるという直観に反する定理が導かれる(バナッハ=タルスキーのパラドックス)。

歴史

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歴史的に微分積分学で扱うことのできた素朴な意味での体積(一般には多次元の体積)は、リーマン積分を用いて表され、有限加法的であった。1902年アンリ・ルベーグは彼の学位論文『積分、長さ、体積』("Intégrale, longueur, aire") において測度の概念を確立する。これにより新たに定義された"体積"は、完全加法的であることを積極的に要求したため、極限概念との親和性が高く、そのためリーマン積分(とジョルダン測度)による場合よりも多くの集合に体積の定義が可能となった。これが測度論の始まりである。その後、コンスタンティン・カラテオドリによる外測度を用いた可測集合の公理的な定式化や、アンドレイ・コルモゴロフによる確率論の公理化などを経て、現代の測度論は広く応用される基礎理論へと発展した。

測度

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測度の定義

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可測空間とする。関数 が次の条件、

  • 空集合の測度は 0 である。

を満たすとき、 は「 上の可算加法的測度」である。

このとき、三つ組 測度空間そくどくうかん: measure spaceという。

測度の性質

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次の性質は、前述の定義から導かれる。

  • 単調性 が可測集合であり、 のとき、
  • が可測集合の列で、各 において ならば、 たちの和集合は可測で
  • が可測集合の列で、各 において ならば、 たちの共通部分も可測である。さらに、少なくとも一つの について の測度が有限値であるならば

測度の分類

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数学の各分野において、それぞれ異なる性質を持つ測度が利用されている。以下は代表的なものの例である。

  • 数え上げ測度: 集合 の元の個数を測度とする。すなわち、 で定義される。
  • ルベーグ測度: 実数空間 において、通常の「長さ」「面積」「体積」の概念を抽象化したもの。区間 の測度が 1 であり、平行移動に対して不変かつ完備である唯一の測度として定義される。
  • ボレル測度: 位相空間ボレル集合族(開集合系から生成される最小のσ-代数)上で定義される測度。ルベーグ測度は、実数直線上のボレル測度を完備化したものとして理解される。
  • ハール測度: 局所コンパクト位相群において定義される、群の作用(左または右からの乗法)に対して不変な測度。ルベーグ測度を一般化したものといえる。
  • ハウスドルフ測度英語版: 幾何学的測度論において、曲線、曲面、あるいはフラクタルのような集合の大きさを測るために用いられる。測る対象の次元(ハウスドルフ次元)に応じて定義される、ボレル測度の一種である。
  • ラドン測度: 局所コンパクトハウスドルフ空間上のボレル測度のうち、内側および外側からの近似(内正則性・外正則性)を満たすもの。解析学において、線形汎関数との対応(リースの表現定理)を通じて重要な役割を果たす。
  • ルベーグ=スティルチェス測度: 単調増加な右連続関数 を用いて定義される測度。ルベーグ測度を、関数の変化率に応じて「重み付け」したものといえる。
  • ディラック測度: 特定の一点 に質量が集中しているとみなす測度。集合 を含めば 1、含まなければ 0 と定義される。ディラックのデルタ関数の概念を測度論的に定式化したものである。
  • 確率測度: 全空間 の測度が 1 である測度()。確率論の基礎となる。
  • 零測度: すべての可測集合 に対して となる測度。

σ-有限測度

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測度空間 Ω が有限であるというのは、μ (Ω) が有限値であることである。また、Ω が測度有限なる可測集合の可算和で表されるとき、Ωσ -有限であるという。測度空間に属する集合は、それが測度有限なる可測集合の可算和であるとき σ -有限測度を持つという。

例えば、実数全体の集合に標準ルベーグ測度を考えた測度空間は σ -有限であるが、有限ではない。実際に、任意の整数 k に対して半開区間 を考えると、これらは可算個であり、それぞれ測度 1 であって、和集合を考えれば実数直線を尽くす。

対して、実数全体の集合に数え上げ測度を考える。これは、実数からなる有限集合に、その集合に入る点の数を対応させるものである。この測度空間は σ -有限でない。なぜなら、どの測度有限な集合も有限個の点しか持たないのであって、その可算個の和集合は高々可算であるので、非可算集合である数直線を被覆し尽くすことができないからである。

σ -有限な測度空間は非常によい性質を持っている; σ -有限性は位相空間の可分性になぞらえることができる.

完備性

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可測集合 Sμ(S) = 0 であるとき零集合 (null set) という。測度 μ完備 (complete) であるとは、零集合の全ての部分集合が可測であることである。もちろん自動的に零集合自身が可測となる。

測度を完備測度に拡張することは簡単である。単純に、可測集合 S と零集合の分だけ異なる集合 S' たち(すなわち、そのような SS'対称差は零集合である)をすべて合わせたものの成す完全加法族を考えればよい。

一般化

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目的によっては、"測度" の値域を非負の実数あるいは無限大に制限しないものも有用である。このような一般化した測度との区別のため、通常の測度を"正値測度"と呼ぶことがある。

以下は一般化した測度の例である:

ハドヴィガーの定理 (Hadwiger's theorem) として知られる積分幾何学における注目すべき結果によると、Rn のコンパクト凸集合の有限和の上で定義された平行移動不変、有限加法的で、必ずしも非負ではない集合関数のなす空間は、(スカラー倍の違いを除き)各 k = 0, 1, 2, ..., n に対して「次数 k の斉次な」測度とそれらの測度の線型結合からなる。「次数 k の斉次な」とは、任意の集合は c > 0 倍すると測度が ck 倍になるということである。次数 n の斉次な測度は通常の n 次元体積であり、次数 n 1 の斉次な測度は「表面積」である。次数 1 の斉次な測度は「平均幅」という誤称をもつ不思議な関数である。次数 0 の斉次な測度はオイラー標数である。

脚注

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参考文献

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  • P. Halmos (1950). Measure theory. D. van Nostrand and Co. 
  • M. E. Munroe (1953). Introduction to Measure and Integration. Addison Wesley 

関連文献

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関連項目

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